「後白河法皇」

五木寛之の「親鸞」にも名前が出てきたり、この時代の登場人物で特に興味があったんで読みました。政略結婚によるぐちゃぐちゃな婚姻関係とか、暗殺、拷問とか日本の中世の頽廃ぶりがよくわかりました。後白河法皇は庶民に人気のあるバイセクシャルで、好奇心旺盛のはやりもの好き、今でいうアスペルガー症候群だったらしいです。大河ドラマでは松田翔太が演じてますね。でも、こういう口を引き裂いてさらしものにしたり、島流しにされて舌を噛み切って出た血で呪いの文言を書いたりという現実の歴史を知ると清盛がマツケンで信西が阿部サダヲという大河ドラマで歴史を知るというのは子どもの歴史教育にはよくない気がしますね。



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「女優 岡田茉莉子」

少し前に本屋で見つけちらっと読んで即買いしました。この人ある意味、吉田喜重と結婚してなかったらもっとメジャーな映画と関われて、また、違った人生歩んでいたんでしょうけど、大女優なのに仕事失ってもアヴァンギャルドな監督についていくというのはよほどの強い意志がないとできないと思います。ただ、こちらからみると不遇と思われている時代でも、商業的には評価されない夫の仕事を評価し尊敬しているので、そういう点では幸せな人生だったのでしょうね。フランスなどで評価されているのは事実なので。
特に父親を知らなかった子ども時代、新潟での戦時中の苦労、東宝、松竹に所属していた頃の前半が回想がおもしろくて、成瀬、小津、マキノといった有名な映画作家だけでなく、当時は小説家が脚本を書くことも多く、映画が文学が近いところにあったので、谷崎、川端ら小説家との交流の話が出てくるのですが、それが興味深かったです。(岡田の父親はトーキー時代に日本のヴァレンチノの呼ばれていた名優で、彼女の名付け親は谷崎)

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「ハーモニー」

装丁と帯に惹かれて買ったけど、イマイチでした。
マークアップのギミックとか、女子高生の一人称という文体とかが自分にはあざとく感じました。おそらく原作者は映画好きで、「ガタカ」みたいな映画の影響も感じるけど現代の事件の未来への折り込み方も説明的すぎるけど、単に骨格だけなぞって、描かれているイメージをそのまま映画化するとおもしろいかもという気はしました。
この小説で描かれる近未来はうちの子どもが100歳だけど、100年先の世界はどうなってるんだろうか。

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「スティーブ・ジョブス Ⅱ」

Ⅱ巻のほうが早く手に入ったので、こちらを先に読みました。私自身は、特にApple信者でも、ジョブス氏に心酔しているわけではないのですが、mac は好きだし、Google のかっこ悪さとモラルのなさは嫌いなので、デザイン重視のApple を選択しているわけなので、彼の存在なくしてそうした製品は世には出なかったという理由から嫌いではありません。
彼の生き様については、ジョブス氏本人から当時「発禁にしろ」と言われたという「iCon」という本とか、Appleの歴史について書かれた「アップルコンフィデンシャル」と本で知ってはいるので、今回の本人が公認したという自伝で、大半がそうと思われる彼の嫌な面がどのように描かれているかはひじょうに興味がありました。その点については本の後半だけですが、それなりに失敗などについては書かれているという印象です。ただ、ボブ・ディランとのことなど自分にとってはどうでもよいようなエピソードにページがさかれている点や、特にNEXTのOpenSTEPがどのように、Mac OS XというOSとして置き換えられて今に至っているかというところの技術的な説明が不適切で、単純に旧Mac OSとのハイブリッドとしてしか説明されていない点などは、いかにソフトウェア業界の人間を対象としている本でないものとはいえ、私は、彼が、彼がカムバックとともに引き連れてきたOpenSTEPへのこだわりが2000年以降のApple繁栄の礎にあると思っているので、ものたりないというか正直著者の見識を疑いました。



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クロスレビュー

この前、本屋で見つけて、パラパラめくってみると、あまりに懐かしいので、つい買いそうになったのですが、紙の質も悪いのに2000円かという現実的でケチな判断が働き、また、こういう懐古趣味的な企画にのせられてしまうような中年には死んでもなりたくないと思ったので、その時は買わずに帰ったのですが、やっぱり懐かしいので、結局、翌日別の本屋で買ってしまいました。
1981年というと中二の頃で、実は中学、高校の頃はほとんど、ミュージックマガジンは買ってはなかったと思うのですが、立ち読みしたたのか、レビューされているアルバムの7割以上は、追っかけていたもの、そうでないものも含めて記憶にあるので、プライドを捨てて(笑)懐かしみました。
やはり中学高校の頃の前半部分のほうが記憶に残ってます。田舎に住んでて、こうした雑誌以外は情報がなかったわけですから、まじめに読んでたんだと思います。逆に、大学に入ってからはおそらくあまり読んでなかったのかもしれません。
ただ、もう一度聞きたいものを曲単位でituneで買おうかと思い、そのガイド的にも役立つかと思ったのですが、ただ単に懐かしいだけだったのか、今もう一度聞きたいというものは、なかったです。


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「建築家 安藤忠雄」

最近出版された安藤忠雄さんの自伝です。以前も書きましたが、安藤さんは私がこの世で最も尊敬する人で、彼のハングリーな生き様や、仕事に対する姿勢を見ると、自分もしっかりしなきゃ、がんばろうという気持ちになり、なんどか生きていく力を与えてもらってきました。これまで安藤さん自身により書かれた本は、純粋に建築に関するものがほとんどで、建築以外の本は、あまりなかったように思いますが、この本もほとんどが建築について語られているものの、彼自身の言葉で書かれた自伝になっています。

また、この本がよいのは、 彼の残した建築のモノクロームの写真が数多く挿入されていることで、その中には、アラーキーにより撮影された、自身の作品である建築の中にいる安藤さん本人の写真も含まれています。以下、この本からの安藤さんの言葉を引用します。

「人生に”光”を求めるのなら、まず、目の前の苦しい現実という”影”をしっかり見据え、それを乗り越えるべく、勇気を持って進んでいくことだ。」

「何を人生の幸福と考えるか、考えは人それぞれでいいだろう。私は人間にとっての本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。その光を遠く見据えて、それに向かって賢明に走っている、無我夢中の時間の中にこそ、人生の充実があると思う。」

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「ヨコモレ通信」

週間文春を買う時は、いつも楽しみに読んでいる辛酸なめ子さんのコラムですが、文庫になっていたので買いました。特に美少年ネタがおもしろいですが、上智大学のふけ男の件が一番おもしろかったです。おもしろいので、突然吹出すおそれがあり、しかも、不気味なイラスト入りなので電車などで読む場合は注意しましょう。

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「アメリカの夜」

またかと思われるかもしれませんがトリュフォーの映画のほうではなくて、阿部和重の小説のほうです。例の蓮實重彦との対談には、元々「ゾンビ」第1作の「生きる屍の夜」が小説のタイトルであったところ同名の小説がすでにあったため、このタイトルになったらしいです。

フィリップ・K・ディックの「ヴァリス」とか、バロウズとか、アンナ・カリーナ、ケネス・アンガーについて語る主人公の嗜好に、私なんかと同世代の映画好き、サブカル人間は昔を思い出す人も多いのではないかと思うのだけれど、実は、自分が一番主人公の嗜好にシンクロしたのは、冒頭のブルース・リーの載拳道に関する部分で、昔「ロードショー」とか「スクリーン」などの映画雑誌の広告に出ていたブルース・リー著の「載拳道」の本を少ない小遣いから高いお金を払って通販で購入したことを思い出しました。

小説家のデビュー作というのは、青臭いけれども、その人のルーツの部分がよく出ていることが多いですが、この人のデビュー作も、途中B級映画的な世界を、蓮實先生の影響を受けた文体で語るところとか、わかりやすくておもしろかったです。

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「シンセミア」

この前「映画覚書」という本をたまたま読んだのと、「文藝」という雑誌の対談で高橋源一郎が94年の阿部和重のデビューでポストバブル文学がはじまったというようなことを言っていたのに興味を持ち、「ニッポニアニッポン」と「シンセミア」の2冊を続けざまに読みました。

「ニッポニアニッポン」もそうですが、「シンセミア」も、盗撮、淫行、暴力など異常行動がリアルに描かれていて、普通の感覚の人間には読んでて辛く、上巻で投げ出そうかと思いましたが、怖いもの観たさというか、先を読みたいと思わせる強さみたいなものがあり、結局最後まで読みました。5年くらい前の小説ですが、閉ざされた狭い人間関係によるものなのかなぜか都市よりも地方で理解を猟奇的な犯罪が多いという現実をリアルに反映したような話です。

ただ、ジェネレーションギャップなのか、ちょっと難しかったです。

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「映画覚書 vol.1」

最近は映画館には年に数えるほどしか行っていないし、まして映画評論の本などほとんど読んでいなかったのですが、近所の古本屋で見つけておもしろそうなので買いました。

最近の小説家のこともよく知らないので、著者の阿部和重氏が、有名な小説家であることも実は知らなかったのですが、昔は私も心酔していた蓮実重彦との対談が載っているのをみてなつかしかったのと、以前このブログにも書いた、私の好きな「ボビーフィッシャーを探して」や「EUREKA」や、カサヴェテスの「オープニング・ナイト」について書いていたので、著者自身にひじょうに興味を持ったのですが、映画好きな人で、映画学校出身ということで納得しました。

かなり長めの「ボビーフィッシャーを探して」論は、スティーブ・ザイリアンという作家のバックグラウンドも詳しく書かれていて、ひじょうに興味深かったです。

対談では、最近の映画(「マトリックス」とかかなりポピュラーな映画も含めて)に対する蓮実氏の意見が読めておもしろいです。特に実は先生はトム・クルーズ好きということを言っていたり、10年のブランクを経て幾分丸くなったかなという部分もある反面、ブライアン・デ・パルマを頑なに認めないところや、ブッシュの前で共和党批判の映画である「真昼の決闘」をいい映画だと言ってしまう元首相の無知をコケにしているなど、蓮実氏らしいところは昔と変わらず、読んでいて痛快でした。

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